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−稲の害虫、イネミズゾウムシの発生と行動の事例について−
これまで有効積算温度の法則による害虫の発生時期の予測法について述べてきた。筆者は、かつて、イネミズゾウムシの発生時期の予測と行動について研究したが、温度反応として分かったことは次の通りである。
(1)越冬世代成虫は、水田に侵入してくる前に、雑木林などの越冬場所に生えているイネ科雑草を摂食するが、摂食している成虫数がその場所にいる全体の成虫数の何%であるのかを予測した。また、摂食すると次第に飛翔筋が発達し、一定のサイズまで発達した飛翔筋を持つ成虫は逐次、越冬場所を飛翔して離脱するので、摂食開始個体率から飛翔離脱個体率を差し引くことによって、雑木林内で摂食している現存個体率もシミュレーション(コンピュータ上の計算)によって求めることができた。実際に、雑木林内で見取り調査を行ったデータと、気温条件を組み入れてシミュレーションした結果とはよく合致していた。(上の写真:イネの葉を摂食中のイネミズゾウムシ成虫;成虫の体長は約5mm)(3)イネミズゾウムシ成虫は、飛翔筋が一定の太さにまで発達すると飛翔を開始するが、有効積算温度でその時期を予測できる。越冬世代成虫は夕方になると飛翔行動を行うが、気温が20℃以下になると飛翔しにくくなる。
(4)成虫が飛翔するようになると、一斉に水田の中に移動分散するので、水田内の成虫の分布がほぼ均一になる時期を予測できる。